【Day32:US163号線11マイル地点~ブラフ】
一晩中風は止まず、谷はいつも風の通り道、風とは相性がいいのだろう。
5時40分に目覚め、美しい朝の光景に出くわす。

砂漠のキャンプは、砂嵐にも見舞われる。
朝起きたら何もかもが砂埃にまみれていた。
髪の毛も顔も、寝袋も…。テントのフロアもすべて砂埃で真っ白け。口の中までざらざら…。
でも、実際のところ、これが砂漠なのだ。
ちょっと遅めの6時40分スタート。

映画「フォレスト・ガンプ」で、フォレストがアメリカを走って何度か横断してて、「疲れた。もう家に帰る…」といった場所がここ。昨日ロードサイドキャンプしたすぐ近くだった。

フォレストはここで旅を終えてしまって、一緒に走ってきた連中もそこで解散してしまったと思われるが、自分の旅はまだまだ続く。


走ってたらイギリス人紳士の車が止まり、写真を撮ってくれた。5ドルのカンパをくれた。


時間は流れてなんかいかない。時間とは蓄積されていくものだということが、ここにいれば何となく感じられる。
わずか50年余りしか生きていないけれど、宇宙の歴史が物語るものは、時間とは点にすぎないのだということ。
何千年であろうが何万年であろうが、それは結局一点の中で営まれている事象に過ぎない。
結論…今一瞬が既に永遠なのである。
モニュメントヴァレイ付近ではいろんな奇岩を見ることができる。

この岩は前アメリカ大統領のビル・クリントン大統領の横顔に似ているのでクリントン岩と勝手に名づけよう。



赤茶けた岩山、いろんな形をした奇岩、まっすぐに続く一本のハイウェイ…。
何もかも見飽きてしまったと思うけど、それでも砂漠はまだ続く。
行けども行けども終わらない。
挙句の果て、夢の中でまで砂漠を走っている自分がいる。いい加減に勘弁してくれ!


9時20分、サン・ジュアン川を渡り、メキシカン・ハットへ。


この旅で流れている川を見たのはコロラド川に次いで二つ目。川下りなどのツアーも行われていた。
川のそばのトレーディングポストの売店で食糧を買って休憩。

昨日水をくれたドイツ人夫婦があとから車でやってきた。
「やけに速いじゃないか?」と言ってくれたが、単純に自分の方がスタートが早かっただけなのだ。
そのあと、フランス人の若いカップルが話しかけてきた。

ヨーロッパの旅人は、概してみんなフレンドリー。好奇心旺盛な連中は必ず珍しい旅人には何か声をかけてきてくれる。

ここ数日、午前10時を過ぎるともう暑くなってきて走りづらい。
午後5時頃でも暑さのピークは続いている。
体がオーヴァーヒート状態になるともう歩くのさえ辛くなってくる。
あまりの辛さや苦しさに涙が出そうになるけれど、乾いた砂漠では涙さえすぐに乾いてしまう。
悲しみを癒すには砂漠はちょうどいいところなのかも知れない。
ハイウェイ上で出会う人々の温かさがありがたい。
ハイウェイ上で休んでいるとしばしば車がとまってくれる。
「大丈夫か?」とか「何か要るものはないか?」とか「水は十分にあるか?」とか「何でこんな狂ったマネをしてるんだ?」とか良く聞かれる。
人間関係だけはここではドライではないのだ。
時折胃がキリキリ痛むほど辛くなって、それでも走るしかないことがある。
暑さと渇きと疲労で、走れなくなっても歩くことはできる。
足のマメがいくつもつぶれて、マメの下の皮までマメでつぶれてしまっても、前に進むことしかできない…。
生きている限りは全力前進なのだ。
お金があっても、水や食料を手に入れる店がなければどうすることもできない。
水やゲータレードがあっても、ぬるま湯状態で飲むことしかできない。
冷たいものが飲みたいと思っても、氷も冷蔵庫もない。
一杯のぬるま湯のような一口の水で命をつないでもらっていると思えばまだありがたいのだ。
砂漠では限られた条件の下で生きていくことしかできないのだ。

スタートのロングビーチから昨日でちょうど一ヶ月。
この一ヶ月で1279キロ走れた。平均して1日41.25キロ走ったことになる。
まだまだスローペースだけど、日々全力前進するしかない。頑張ろう!

今日午後二時の砂漠で、走ってて暑さと渇きで死にそうになりかけていた時に撮った写真。
バギーを押して歩ける限界状態の登坂路、恐らく勾配は10パーセントくらいあったろうか。
5歩押しては立ち止まり、さらに5歩進んでは深呼吸。
永遠に終わらないかのような登り…わずか数百メートルではあったが、登り切ったあとに涙が出そうになる。

寓話:ある日旅人は砂漠を走っていて峠に差し掛かりました。
一つ峠を越えるとまた違う砂漠が広がっていました。
そしてまた次の峠を越えるとまた違う砂漠に出てきました。
こうして旅人は延々と砂漠を走り続けるのでした…。(永遠に続く…)

生きている限り、人生とは辛いものなのだ…。
そう信じて砂漠のランを楽しんでいる。
ブラフの町に入る少し手前で若いカップルの車が止まり声をかけてきてくれた。
フラッグスタッフから来たらしいが、アリゾナ・デイリー・サンの新聞記事を見てくれていたらしい。
一緒に写真を撮った。ゲータレードとスナック菓子を提供してくれた。
メディアの力にも時に救われるものだ。
そして、午後5時半、ブラフの町に入り、今日の宿に着いた。テューバシティ以来久々のモーテル。
5日ぶりに飲むビール…。
うまい!
ハイウェイの脇にいっぱい捨てられているビールの空き缶や空き瓶を見ながら恨めしく思っていた自分も俗物…。
でも、生きてビールのが飲める幸せ…。生きてるっていいなぁ…。
*本日の走行:56・0キロ、ロングビーチからの積算走行距離:1335.0キロ
*お知らせ
1)「PEACE RUN2011アメリカ横断5,000キロランニングの旅」の最新情報は、ツイッター・Facebookで。
旅のレポートや動画は
ブログと
公式サイトでも…。
☆Follow me on TWITTER @kaytaka @ibelieve_takash (ツイッターアカウントをお持ちの方、フォローして下さい)
☆Facebook Make friends with 高繁勝彦 (フェイスブックをされている方はぜひお友達になって下さい)
*フェイスブックで
PEACE RUN世界五大陸自走の旅ファンページもご覧下さい。
2)
PEACE RUN×10運動、実施中です。特に走らない方は奮って参加して下さい!
3)「PEACE RUN 2011アメリカ横断5,000キロランニングの旅」支援Tシャツ、引き続き販売しております。
販売サイトは
こちらです。
★INFORMATION
1)イベント情報
「第2回ゆったりまったり、里山を歩こう、走ろう会」2)「RUN×10(ラン・バイ・テン)運動」オフィシャルグッズ
「RUN×10手ぬぐい」 大好評発売中!

詳細は…
こちら。
3)
JOBBBラジオを聴こう!! 日本国・大阪は千里中央から世界へ発信するJOBBBラジオ!
局員達が世界中を飛び回り、直接体感した音や匂いや味や温度などをありのまま皆さんにお伝えします。
毎週木曜日の深夜12時~1時ごろに番組を更新(アップロード)します。
ネットラジオなのでダウンロードして聞くことも可能ですし、過去の番組は更新日を経過すれば、24時間いつでも視聴できます。
★東日本大震災で被災した人たちのためにできること…
(その1)
RUN×10(ラン・バイ・テン)運動
被災しなかったランナーの皆さん:その日の走行距離に10を掛けた金額を毎日貯めて募金しませんか?10キロ走ったら100円を貯金箱に入れるだけ。自分のためにも被災地の復興にも役立ちます。今すぐ、毎日実行できること。
・イベントは
こちら…。
・詳細は
こちら…。
(その2)
東日本大震災救済支援プロジェクト第一弾…PEACE RUN支援Tシャツ販売中!
必要経費を除いた売り上げの全てを日本赤十字社に寄付します。限定300枚!購入申し込みは
こちら…。
(その3)
「走る.jp」による「東北地方太平洋側地震 支援Tシャツ」を購入しよう!
詳細は
こちら。
★関連リンク
*アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦の公式サイト
「PEACE RUN 世界5大陸自走の旅」
PEACE RUN 2011 アメリカ横断5,000キロランニングの旅公式サイト *
PEACE RUN 2011 支援サイト *
Go the Disance!(英語版)
スポンサーサイト
テーマ:夢に向かって生きる - ジャンル:ライフ
- 2011/06/25(土) 23:59:59|
- PEACE RUN2011アメリカ横断ランニングの旅
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
現実はきつい旅なんでしょうが
今は夢の中を旅してる感じですか?
きっと日本に戻って来てからこの旅も夢の中の
出来事だったようにKAYさんは楽しそうに僕らに話してくれるんでしょうね。
写真の笑顔が一日一日素敵になって行きます。
早くKAYさんに会いたいな~会って色々最近会った事をお話したいです。
KAYさんのマラソン講座を参考に色々頑張ってますよ!
私のジョギング愛読書はKAY’S BLOGです(笑
- URL |
- 2011/06/26(日) 23:34:44 |
- MASAKI #-
- [ 編集 ]
MASAKIさん:
楽で楽しいと言えるものではありません。
ただ、本当にスピリチュアルな何かが隠されているのは事実だと思います。
走るという行為の中に秘められた精神的な何かがそこでつながってくるんですね。
求道者ではないのですが、その奥深くに隠された何かを見つけに行きたい気分でもありますが…。
MASAKIさんもランの世界を楽しんで下さい。
- URL |
- 2011/06/27(月) 05:07:05 |
- 高繁勝彦 #-
- [ 編集 ]