【ストレイト・ストーリー】

中古のDVDを購入して今日見た映画「ストレイト・ストーリー」
『ストレイト・ストーリー』(The Straight Story)は、デヴィッド・リンチ監督のロードムービー。
アイオワ州ローレンスに住む老人が、時速8kmのトラクターに乗ってウィスコンシン州に住む病気で倒れた兄に会いに行くまでの物語である。1994年に「ニューヨーク・タイムズ」に掲載された実話を基にしている。
以上はウィキペディア「ストレイト・ストーリー」の説明から引用
*あらすじ
舞台はアイオワ州の片田舎ローレンス。73歳の老人アルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース=映画撮影当時80歳)娘のローズ(シシー・スペイセク)と暮らしているが、根っからの頑固者。
不摂生が元で体のあちこちにガタが出て、ついに倒れてしまって病院に連れて行かれる。
医者は手術を勧めるが彼は医者の世話になどなりたくない。
それまで1本だけ使っていた杖がそれをきっかけに2本使うことになった。
そんなある日、10年前喧嘩して以来交流のなかった兄ライル(ハリー・ディーン・スタントン)が発作で倒れたという知らせが入る。
兄が住む隣のウィスコンシン州マウント・ザイオンまでは560キロも離れている。
車があれば数時間で行ける距離だが、アルヴィンは目も悪く車の免許もない。
おまけに足腰が不自由で杖がなくてはどこにも行けない。
それでも、何とか兄のライルに会うためにこの頑固じいさんは誰の力も借りず、自力で兄を訪ねることを決心。
彼が選んだ旅のパートナーは時速8キロで進む芝刈り機。
その後ろにはトレイラーをつけて、数週間野営しながらの旅を続けることになる。
娘をはじめ近隣の仲間が反対してもアルヴィンは聞く耳を持たず…。
一度は喧嘩別れした兄だけど、仲直りをして一緒に星を見たいと、ついに旅立つのだが…。
*****
ずっと見たいと思っていた映画だった。
最初に使っていた芝刈り機はすぐにダメになって、ヒッチハイクで自宅まで戻ってくるが、アルヴィンの性格を物語るのは、そのポンコツ芝刈り機の処理の方法…。(これは映画を見て確認を!)
一度失敗したからと言ってあきらめちゃならない…これもまた人生。
考えられる可能な方法はすべて試すというのもまた鉄則。
試行錯誤の体験の中から「自分流」というものが生まれてくる。
困難を乗り越えるロードムービーということで、自分自身のバギーを押しての「アメリカ横断ランニングの」旅にもダブってしまうのだが、旅の中での出会いはまさにドラマ。
アルヴィンが旅で出会う人には悪人はいない。
彼自身の人柄が鏡になって、出会う人々が皆それぞれにいい部分を見せてくれるのかも知れない。
登場する人物も映画全体のセリフもきわめて少なく思えるのだが、それゆえに一人一人のキャラクタも魅力的で、アルヴィンが一人一人に語る言葉も奥が深く、身に染みるものがある。
静かに淡々と語られるアルヴィンの言葉は、いつも何か抑制されたものがある。
予告編の中にも出てくるが、サイクリストたちの集団に出くわした夜、キャンプでその若者たちに語っている。
「年老いてつらいことは若い頃を覚えていること」自分もこのセリフが一番印象に残った。
第二次大戦で全線で狙撃兵として活躍していた頃の暗いエピソードも、のちのアルヴィンの人生に影を落としているのだろうが、それでも何度も出てくる満天の星空の下のキャンプの平和な夜に、アルヴィンは心躍らせながら旅を続けていたことだろう。
旅はよく人生にたとえられるけれど、人生そのものが旅なのだ。
辛くても楽しくても、ひたすら前に進み続けることしかできない。
道中でいろんな人と出会い、いろんな経験をしながらも、目的地にたどり着くまでは決してあきらめない。
それにしても、アルヴィンが時速8キロのトラクターに乗って旅を続ける場面は、ゆったりまったり感たっぷり。
自分がバギーを押して走っている情景をそのまま見ているかのようでもあった。
あせらなくてもいい…いくら時間をかけてでも成し遂げなければならない夢があることをアルヴィンは教えてくれているのだろう。
真っ直ぐにしか生きることのできない真っ直ぐな物語…アメリカ中西部の、地平線への果てと真っ直ぐに続くハイウェイを今一度走りたいと思わせる、そんな映画だった。
付け加えておくと、この映画が公開された翌年の西暦2000年に、アルヴィン役のリチャード・ファーンズワースは自殺している。
ガンに侵され体を蝕まれたあげくその苦痛から逃れるための選択であったという。
「ストレイト・ストーリー」予告編【映画データ】
「ストレイト・ストーリー」1999年・アメリカ、フランス合作
監督:デヴィッド・リンチ
出演:リチャード・ファーンズワース、シシー・スペイセク、ハリー・ディーン・スタントン
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テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画
- 2012/10/14(日) 17:26:28|
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| コメント:2
このblog記事、じっくりしみじみ拝読いたしました。
何か、せつなくなりそうなストーリーですね。
私にも、ふたつ年上の兄がおります。北海道登別(室蘭寄り)に住んでいます。
早期退職をしたおかげで、長年(30年近く)行き来がなかった兄と出会うようになりました。
身内でありながら一緒に暮らした期間があまりに短かく、幾度か出会う内に思い出話も底をついてしまいました。
今冬、就農仲間さん夫妻から北海道旅行(札幌雪祭り)を誘われております。
かつて札幌に移住するつもりでマンションを購入し、そこには念願の北大に入学した娘さんが住んでいました。
しかし、娘さんの卒業・就職とともに状況が変わり、これを機に売却することにしたらしいです。
その思い入れのマンションに泊まらせていただき、実兄とも出会いたいと考えております。
予告編を見ただけで、ウルウルとなりそうでした・・
- URL |
- 2012/10/14(日) 18:25:54 |
- mid-tail #-
- [ 編集 ]
mid-tailさん:
切なくなる場面もありますが、じわじわと感動できる映画です。
人と人のつながり…これはお金には換えられません。
特に血の繋がった親兄弟に関してはいろんなしがらみもあって難しいのですが、幼い頃をともにした兄弟の絆って切っても切れないものなのだと思います。
ぜひ一度この映画ご覧下さい。
黙っていても分かり合える…たとえずっと離れていても見えない糸でつながれている…そんなことを感じさせられます。
> このblog記事、じっくりしみじみ拝読いたしました。
> 何か、せつなくなりそうなストーリーですね。
> 私にも、ふたつ年上の兄がおります。北海道登別(室蘭寄り)に住んでいます。
> 早期退職をしたおかげで、長年(30年近く)行き来がなかった兄と出会うようになりました。
> 身内でありながら一緒に暮らした期間があまりに短かく、幾度か出会う内に思い出話も底をついてしまいました。
>
> 今冬、就農仲間さん夫妻から北海道旅行(札幌雪祭り)を誘われております。
> かつて札幌に移住するつもりでマンションを購入し、そこには念願の北大に入学した娘さんが住んでいました。
> しかし、娘さんの卒業・就職とともに状況が変わり、これを機に売却することにしたらしいです。
> その思い入れのマンションに泊まらせていただき、実兄とも出会いたいと考えております。
>
> 予告編を見ただけで、ウルウルとなりそうでした・・
- URL |
- 2012/10/15(月) 10:20:52 |
- KAY(高繁勝彦) #-
- [ 編集 ]