【夢銀行のおはなし】

ある日、夢博士はかわいい孫娘の夢子ちゃんから質問を受けました。
「ねぇねぇ、博士。あたし大きくなったらお姫様になりたいんだけどどうしたらいいの?」
「夢子ちゃん、素敵な夢だね。よしよし、教えてあげよう。
夢ってのはね、いったん頭の中にできあがると『夢銀行』ってところに自動的に預けられるんだよ。
預けられた夢は一度に引き出せない。少しずつ現実の世界に引き出していくしかできないんだ。
引き出した夢がひとつの形になるまでは時間がかかるし、夢を預かってもらう期間は預けた人が生きている間だけ。
だから、生きている内に全部引き出せるようにしないといけないんだよ」
「夢を引き出さないまま死んじゃったらどうなるの?」
「その夢はかなわないまま、その人の人生も終わっちゃうんだよ。
たいていの人はね、子供の頃に預けた夢を大人になるまでに忘れちゃうのさ」
「せっかく預けたのにそれじゃもったいないわ」
「そうだね。ただ、預けている間に利息ってのがつくよ。どんどん夢が膨らんでいくんだ。
夢が実現することを考えれば考えるほど大きくなるんだ」
「どうやったら預けた夢を引き出せるの?」
「それはね…わしにも分からないんだ。…夢をかなえるために今できることを一生懸命頑張るくらいのことだろうね。
大切なのはね…あきらめないことさ。これが自分の夢なんだって強く信じ続けることなんだよ…」
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テーマ:伝えたいこと - ジャンル:日記
- 2018/12/29(土) 07:23:57|
- 小説
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【ある愚か者の場合】
夢の中でその声は聞こえてきた。
鼓膜に響く、低い、それもかなり低い、男の声だ。
「お前にしかできないことをやれ」
とその声は言う。
「直感を大切にして感じるままに生きろ」とその声はなおも語りかける。
僕が声を出そうとすると僕の口は開こうとしない。まるで口をガムテープで固定されてしまったかのようだ。
「お前は話さなくていい。俺の話に耳を傾けるのだ」以心伝心…テレパシーというやつか、どうやら声の主は僕の思っていることをきちんと理解しているらしい。
「目先のことにとらわれる必要はない。すべて最後はうまく行く。信じろ」声は自信たっぷりげにそう言う。
「お前の最終の目的だけをしっかりとイメージしておくことだ。たどり着くべきゴールは見えているか?そこに至る道はすでにレールが敷かれているのだと思え。遠回りをするかしないかはお前次第。変に考え込むと回り道をすることになる。だから、あくまで直感を大切にしろと言っているのだ」
直感…感性のチカラか…。
「そうだ。感じるままでいることだ。頭で考えたことはすべて幻想なのだ。目に見えるもの、耳に聞こえるもの、ふれられるものはダイレクトに感じればいい。ただそれだけだ」頭で考えたことはすべて幻想…
「幻想…そう、幻だ。実体の無いものだ。恐怖や不安がまさにそれだ。ないものを自分でかってに作ってそれにビクビク震えるのは愚者のすることだ」愚者か、愚か者のすること…。
「お前は愚か者なんかではない。人はみな宇宙から生まれ、宇宙に帰っていく。この世界でのそれぞれの役割は既に決められている。だから、何を考える必要もないってことだ。ありのまま、あるがままの自分で、あらゆるものをすべて受け入れるのだ」なるほど、一理ある。
「人は、考えるからいろんなものを拒んでしまう。拒否するということは一番ネガティヴな行いだ。辛く苦しいことは皆避けたがる。でも、それもすんなりと受け入れるべきもの」つまり、人は、謙虚であるべきなのか…
「そうだ。そのとおりだ。謙虚であることが一番なのだ。生まれたての赤子のように、見るもの聞くもの肌にふれるものがすべて受け入れられれば、きっと目に見えない耳に聞こえない肌にふれられないものもきっと感じられるようになるはずだ」謙虚、素直、生まれたばかりの赤ん坊なら当たり前だな。
「たとえばだ、お前は断崖絶壁に立たされている。一歩足を踏み出せば、高さ100メートルの崖っぷちから真っ逆さまに転落する…そんな状況をイメージしてみろ」
それは恐ろしい…
「恐ろしいに決まっている…それはお前が既に転落するイメージを考えてしまっているからだ」じゃ、どうすれば…?
「一歩踏み出した時点でお前は橋を歩いている。橋の向こうにはお前の仲間が待ってくれている。橋を渡り切った時、断崖絶壁はお前のつくりだした幻想にすぎないということが分かるだろう。最初の一歩に精神を集中するのだ。今その一歩を踏み出す…それが今お前がなすべきことなんだよ」
???
「実体のないものについて考える必要はないのだ。お前たち人間はどうしてそう実体のないものにとらわれるのだ?邪念があるがゆえにいつもいつも無駄に神経をすり減らしている。今を生きて今を楽しめ。未来も幻想にすぎないってことがいずれ分かるはずだ」そう言って声は僕の耳元でフェイドアウトされた。
未来も幻想にすぎない…
だとすれば、僕達は今という時間しか生きられないってことか…。
*
「PEACE RUN世界五大陸4万キロランニングの旅」公式サイト
テーマ:よく生きる - ジャンル:ライフ
- 2015/06/22(月) 22:01:47|
- 小説
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【小説「花池物語」】

第1話 「理不尽さと不合理についての考察(1)」
1979年、僕は某私大に通う大学1年生で、キャンパスから徒歩15分のところにある「花池荘」という学生寮に住んでいた。
世の中はバブル経済のピークに向けて上り詰めていこうという時期、大して何も考えていなくてもものごとは自然にスムーズに流れていたし、新聞を賑わせるような凶悪事件や犯罪もそう多くはなかったから、ある意味では平和な時代だったのだろう。
僕は浪人することもなく大学に合格し、高2の夏から付き合っていた彼女は地方の国立大学に進学するため、必要に迫られて別れる羽目になった。
いつも一方的な彼女の性格に僕は最後まで逆らうことができなかった。
デートに行く時も主導権は彼女にあって、いつ・どこで・何を…5W1Hの選択権は常に彼女が握っていたから、こちらはただ言われるままに首を縦に振るだけ。
「ねえねえ、次の土曜の夜は映画見よう。前売り券2枚買っておいてね。で、映画の前にはピザ食べよう。そうそう、それとチョコパフェも。ずっと食べてなかったもんね。やっぱりチョコパフェは毎週末に食べなきゃ元気出ないわ。時間があればさ、新しいワンピース見ていいでしょ、ね?ね?ね?」単にわがまま…といってしまえばそれまでなのだろうけど、彼女は人を説き伏せる独特のテクニックと、あらゆる人間の心理の微妙な変化さえ確実に捉えてしまう不思議な能力を持ち合わせていた。
自分が優柔不断な人間だからだろうか。自分には無い彼女のそんな強引さに僕は魅せられてしまったのかもしれない。
どういうわけか、最初に付き合ってほしいといったのも彼女だったし、別れようと申し出てきたのも彼女だった。
「今までとても楽しかった。いつまでも変わらない友達でいましょうね…」最後にもらった手紙の末尾に書かれたその言葉にはいったいどんな気持ちが込められていたのだろう。
* * * * *
大学というところに、多かれ少なかれ希望や期待を持っていなかったといえば嘘になるだろう。
それでも一般社会とは一部閉ざされた世界で、理不尽さや不合理さがまかり通るということを知らされるには、19歳という年齢は決して早くは無かったのだろう。少なくとも今はそう思う。
「押忍(おす)」ということばを一日にどれだけ発したことだろう。
「押すべし、忍ぶべし」大学の体育会剣道部に入部してまず覚えさせられたのがこの2文字だった。
2回生統制部長補佐の土田先輩が1回生の我々を集めて話してくれたのはこうだ。
1)50メートル前方に先輩の姿が見えたら大声で「オーッス」とあいさつするように。
2)先輩の話には必ず「オス」とあいづちをうちながら聞くこと。
3)何かごちそうしてもらったら「オス、ごっつぁんです」と礼を言うこと。
4)先輩からの命令は絶対服従である。
5)組織の一員として忠実であれ。先輩・同級生を裏切るようなマネを決してしないこと。
その当時1回生男子部員は自分を含めて4名いた。我々は土田先輩の話しに、教えられたとおり「押忍」を何度も連発した。
入部した翌日からはガクラン(学生服)の上下を着用し、革靴を履き、ポケットには常にマッチを2箱忍ばせておいた。先輩がタバコをくわえられたらすぐさま体の後方でマッチを摩って火をつけ「押忍、失礼します!」でその火を差し出すわけである。
先輩によっては「おい、タバコ持ってるか?」と言われた時のために、常時マイルドセブンやセブンスター、ハイライトなど1回生4名で買っておいて数本ずつタバコの空箱に入れていつでも出せるようにしておかなければならなかったのである。
木下先輩はハイライト、東先輩と吉田先輩はマイルドセブン…という具合に、3・4回生の先輩方のタバコの好みまで自然と覚えさせられるまでにいたった。
ある時、剣道部で一番恐れられている4回生の上谷先輩に、1回生で一番おとなしく気が弱いと見られている内海が呼び出された。
「おい、内海。タバコ買ってきてくれるか?」
「押忍、1回生内海、喜んでタバコを買いに行かせて頂きます!セブンスターでよろしかったでしょうか?」
「おう、セブンスター3箱な」
「…」
「どうした?…あ、金か。金ね…。ちょっと待てや」そういうと上谷先輩はポケットから手帳を出し、メモ用紙を一枚ちぎってペンで何かを書き始めた。
「1-0-0-0で1000。よっしゃ、これ」
「…これは…?」「ちょっと今手持ちがないから1000円の小切手や。それで買うといでや。釣りはとっときな」
「…お、押忍。ごっつぁんです…」内海はダッシュでタバコ屋に向かい、自分の財布から金を出して上谷先輩に渡すセブンスター3箱を買ってきた。
聞くところによると、この上谷先輩は自分の金でタバコを買ったことがないという。飯を食いに行く時にも財布を持ち歩かないし、大酒飲みで知られているが自分の金では酒を飲まないということで有名なのだそうだ。
一日の大半をパチンコ屋で過ごし、パチンコ屋が休業の日には学校の図書館で寝ているという。
「何か、とてつもなく大変なところに足を踏み入れてしまったな…」剣道部入部2週間目にして、僕は、まるで巨大な渦のような何か見えない力に飲み込まれようとしている自分に気づいた。
(つづく)
*この物語は事実に基づいたフィクションです。登場する人物や設定は一部を除き架空のものです。
テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学
- 2012/11/20(火) 19:34:19|
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