KAY'S BLOG

独行道~Lonesome Road of Running

旅する冒険家、坪井伸吾展

【旅する冒険家、坪井伸吾展】

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2011年、アメリカ横断ランニングの旅に出る直前、東京は明治大学(植村直己さんの母校)で開催された日本冒険フォーラムの会場で、初めて坪井伸吾さんと出会った。

きっかけとなったのは、地球二周サイクリストで植村直己冒険賞を受賞されたお友達の中西大輔さんの紹介。

アウトドア関連のメディアを通じても高名な坪井さんのお名前は存じ上げていた。

何よりも、2005年に既にサポートなしでアメリカ大陸を駆け抜けていたことをネットで知っていたので、いろんな情報をお聞きできればと思っていた矢先のこと。

サポートなし(伴走者・伴走車なし)の旅では、ありとあらゆることを自分だけでやらないといけない。そんな旅がいかにタフでハードであるか、分かるのは経験者のみである。

2011年、私がアメリカ大陸横断ランニングの旅に出る以前に、日本人では坪井さんを含むたった二人(あくまでも記録に残されている者のみ)が同じことを成し遂げられていたことが分かっている。

坪井さんの前に走られていた方は名前も素性も分からない。

分かっているのは、1980年代半ば、学研が出していた「シティランナー」という雑誌に連載記事を書かれていた方、というだけ。


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坪井さんのように最小限の装備でバックパックを背負っての走りは体へのダメージも大きい。

酷暑の砂漠の平原や寒冷のロッキー山脈も旅されている記事に鳥肌が立った。

そんな先駆者がおられたおかげで、私自身いい刺激をもらうことができたのだけれど、いざ自分でやってみて初めて分かることが多々あるもの。まさに百聞は一見に如かず…なのである。

坪井さんはバイクでの世界一周、イカダでのアマゾン河下り、世界各地での釣り、そしてこのアメリカ大陸横断走り旅とさまざまなジャンルでの冒険を成し遂げてこられている。

先週月曜日、坪井伸吾展初日にイベントの準備をお手伝いする際に、彼の著書「ロスからニューヨーク走り旅」という本を購入。今朝、読み終えて、それが今日のトークショウの予習になっていた。しっかりと予習していたおかげで、講演での坪井さんの生の話はいい復習となった。


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トークショウでは、時系列に従って撮影された旅の写真をスライドショーでスクリーンに映し出しながら、それにまつわるエピソードや思い出を語っていかれるというスタイル。

走り始めたきっかけが40になってからという。階段の昇り降りで脚が痛くなり、これではいけないと始めたのがランニング。

学生時代にもホノルルマラソンを走ったり、しまなみ海道のウルトラ遠足なども完走されていたのだが、走り旅の経験もなく、いきなり北米大陸を走るというチャレンジに挑まれるあたりは、アスリートではなくさすがに冒険家。

それでも、準備においてはいろんな方々からの情報を得ながら、旅の装備も最小限、できるだけコンパクトで軽いものになるように、最新の注意を払ったという。

インターネットでは、アメリカ大陸横断ランニングの記録としては「トランスアメリカ・フットレース」くらいの情報しか入手できない。個人でサポート無しで走るというのは(恐らく前述の方一名のみで)前例がないのだ。

一日に40〜60キロ走る。当然のことながら、僻地では水や食料も手に入らないし、いったん道に迷ってしまえばとんでもないことにもなりかねない。

どこでもないところの真ん中でテントを張って野宿するも、コヨーテや野犬の群れも来るだろうし、銃を持った誰かがやってきてもおかしくない。原野で毒蛇に噛まれて死んでしまったりすれば、誰にも発見されずに骨になってしまうこともあり得る。

真夜中の恐怖…風や奇妙な物音が安眠を妨げるシーン、これは野宿経験者なら誰でもありうること。ネガティヴな思考がさらにマイナスの状況を作り出すのだ。

3000メートル級の峠越えでは氷点下での野宿もあり、砂漠の平原では45度を超える熱波の中を走る。

高速道路に侵入、パトカーにはしょっちゅう停められ、警官とのやりとりが絶えない。

モハヴェ砂漠ではヒッチハイク。あまりの暑さに走れなくなって、不本意ながらも自動車での移動を選択。のちにこの区間は走り直すことになるのだが、危険回避するということも自分の命を守るためには避けられないこと。

大自然の中では何が起こっても不思議ではない。ある日突然気候が変わる。大雨や突風、竜巻も起こりうる。



「うんうん…そんなこともあった。それもあるある…」


坪井さんの話の大半は、普通の人なら驚愕に値することばかりなのだが、同じことを経験した私にしてみれば、うなずけることばかり。


サポートなしの一人旅では、何よりも危機回避能力が問われる。これは、ランニングのみならず徒歩、自転車、バイクでも同じ。

起こりうるシチュエーションを分析しながら、今どんな対応をすべきか、常に考えておく必要があるのだ。どんなに疲れていても、自分の命と健康は自分で守らなければならないし、誰かが何とかしてくれる…そんな甘い考え方では旅は継続できないからだ。

街にたどり着かなければ宿もない。水やクッキーだけでまともな食事をとれないこともしばしば。そんな中で親切な方々との出会いが心を癒してくれる。出会いに感謝すべきは旅人の鉄則。生涯を通じて忘れられないような出会いも、こんなタフでハードな旅であるがゆえに経験できるもの。

イリノイ州スプリングフィールドまでやってきて、ビザなし滞在期間3ヶ月を超えられないので、旅を一時断念せざるを得なくなってしまって一時帰国。

だが、彼の旅はそんなことでは終わる訳がない。装備を見直し、気分も一新して旅の再スタート地点に向かう。

日照時間が短くなるため、走るペースも上げなくてはならない。さらに、ロッキー山脈よりもタフでハードなアパラチア山脈越えもある。1000m未満の峠が何度も繰り返され、小刻みに上り下りが連続して、足腰だけでなくメンタル面でも相当なストレスとなり得るのだ。

10月26日に坪井さんはニューヨーク州マンハッタンのはずれにあるバッテリー・パークでゴール。

大西洋にたどりついたかとおもいきや、その足で走り残していたモハヴェ砂漠へと…。季節が秋になり、真夏の熱波はもうない。

あれだけ辛かった走りも、ゴール間際となれば辛くも何ともなくなってしまう。この瞬間のために頑張ってきた、と思えるからだ。

しかし、旅人にとって旅の終わりはなぜか寂寞とした思いに見舞われる時間。

できるものならまだ走り続けたい…これも長旅を続けてきた旅人にしか分からない感覚なのだろう。


そんなこんなで坪井さんのアメリカ走り旅は142日をかけて5393キロ走破を完了。


トークショウはアメリカ横断の話だけで予定の時間を軽く超え、二時間近く続いた。あまりに面白すぎる話で聞く我々も時間をすっかり忘れてしまうくらい。



「自分ですら知らない自分のチカラを知る。これはヒトにとって至福の喜びであり快感であると思う」

と彼は言う。チャレンジしたいと思う気持ちは、未知の自分と遭遇したいという思いから生まれてくるということなのだ。





*****





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以下は、坪井さんご自身の本についてのコメント…

ほとんど人と接しない一人旅なので、独り言と心の言葉で文が構成されているところもある特殊な本。基本的にはただひたすら走っているだけだけど、心は自由に現在と過去を往ったり来たりする。
 
普通、マトモに生活している人はこれほどの自由時間を持ちうることはありえず、仮にもちえたしても、その時間を自分の内側に向け続ける環境もそうはない。この本はランニングの本というより、やっぱり旅本。
 
走っていく中で、苦しい状況は次々出てくるんだけど、それは自ら求めたものなので、本人は恐ろしく幸せな時間の中にいる。それがうまく伝わったとしたら、この本は成功している。
 
文章を書く人間にとって、初めての一冊を越えるのは途方もなく難しい、と、聞くが、確かにそれは感じる。1999年のアマゾン漂流日記から13年。それだけ時間をかけてロスーニューヨークはようやくアマゾンに並んだかな、って気がする。
 
ただアマゾンはアマゾン。誤字脱字だらけだし、文章も荒いけど、もうあのノリはあの時にしか書けないもの。同じ土俵にたてないから比較はしにくい。

旅本の専門店、「のまど」の店長が、プロの目から見て、これはデザインもいいし、売れる本、だと、思う。とまで言ってくれたんだけど、実際は・・・・。 


*****


自分の心の内側に向けられる時間をフルに使って、恐ろしく幸せな時間を過ごす旅、それは人間として最高に贅沢な時間の過ごし方ではないかとも思わされる。

今回の、トークショウと彼の著書「ロスからニューヨーク走り旅」で、私も忘れかけていたことをいくつか思い返すきっかけを頂いた。と同時に、止まっていた時間の一部が動き出したかのような錯覚さえ感じる。

私も旅の途上にあっては、考えることは坪井さんと大いに共通する部分がある。ただ、今回特に強く感じさせられたのは、直感を信じるということ。

そして、とことん楽天的な生き方を実践すること。

すべて最後はうまくいく…これが僕のポリシーだ。最後は結局何とかなるもの、何とかするもの。

何とかならなくても、バカボンのパパが言うように「これでいいのだ」と割り切ってしまうこと。

腹をくくって覚悟を決めれば怖いものなど何もない。

行き着くところまで行ってしまえばあとは野となれ山となれ。

いつも笑顔で…Be Happy!


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*坪井伸吾さんの著書はこちらで…








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テーマ:より良く生きる! - ジャンル:ライフ

  1. 2014/09/14(日) 23:59:59|
  2. 冒険
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

お世話になりました

高繁さん、準備から撤収まで本当お世話になりました。ありがとうございます。そして誰よりもリアルに共感していただけること感謝です。書かれてあること、まさにその通りです。北米横断ランはしんどくて楽しくて手ごたえある時間でした。
  1. URL |
  2. 2014/09/17(水) 02:09:03 |
  3. つぼい #-
  4. [ 編集 ]

Re: お世話になりました

坪井さん:こちらこそありがとうございました!また大阪にお越しの際は一声お掛けくださいね!


> 高繁さん、準備から撤収まで本当お世話になりました。ありがとうございます。そして誰よりもリアルに共感していただけること感謝です。書かれてあること、まさにその通りです。北米横断ランはしんどくて楽しくて手ごたえある時間でした。
  1. URL |
  2. 2014/10/02(木) 09:38:40 |
  3. KAY(高繁勝彦) #-
  4. [ 編集 ]

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KAY(高繁勝彦)

Author:KAY(高繁勝彦)
冒険家:アドヴェンチャー・ランナー、NPO法人“PEACE RUN”代表、サイクリスト(JACC=日本アドベンチャーサイクリストクラブ評議員)、ALTRA JAPANアンバサダー
旅人、詩人・アーティスト、クリエイター、ナチュラリスト…。元高校教師(英語)。

大阪府松原市生まれで、現在、大阪府富田林市に在住。

楽天ブログ時代(2006.4.2)からノンストップブログ更新中。公式サイト
「PEACE RUN 世界五大陸4万キロランニングの旅」
“KAY’S WORLD”もよろしくお願いします。

プロフィール詳細はこちら

二度の日本縦断(「PEACE RUN 2010日本縦断3,443kmランニングの旅「PEACE RUN2012 日本縦断ランニングの旅 PART2」で実質の日本一周ランニング6,925kmの旅を完結。

2011年はPEACE RUN 2011アメリカ横断5,285kmランニングの旅を138日で完了。

2013年9月から163日で「PEACE RUN2013オーストラリア横断ランニングの旅」5,205kmを走破。

2014年11月から2015年2月、83日でPEACE RUN2014ニュージーランド縦断ランニングの旅2,796.6kmを走破。


2016年7月〜11月、110日間で7カ国3,358.8キロ、「PEACE RUN2016ヨーロッパランニングの旅」を走破。

現在まで3つの大陸で16,637キロ走破。残り三大陸で23,363キロを走ることになる。

東日本大震災から3日後に「RUN×10(ラン・バイ・テン)運動」を発案・提唱、全国に展開させる。

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